2~3年後のAIサービスと今のプロダクトマネージャーに求められること
この記事の目的
- 自分用の備忘録です。
- 2~3 年後、想定が当たったらちょっと嬉しいな。くらいのポエムです。
TL;DR
- 現時点で多くの人が AI に期待することは雑に言うと下記2点だと思う
- 人間ができることを効率化・自動化する
- 人間の能力ではできないことを実現する
- 近年は「人間ができることの効率化・自動化」について言及されることが多い
- これ自体はとても革新的で、たぶん不可逆
- しかし、この方針は長期的には組織・人から徐々に能力を奪うことにつながる場合がある
- ※ もちろん全てではない。自動化の副作用がない業務は結構あると思う
- ※ しかし調査等のタスクにおいては、調べる過程で周辺知識を体系的に身につけるケースもあると思ってる
- その問題が幅広く認知される2~3 年後くらいは「人間の能力ではできないことを AI が実現する」に多くの人の興味が移ると思ってる
- 具体的には下記のような例が考えられる
- プロダクトチームの成果物を営業支援AIに反映し、インサイドセールスを効率化する
- 営業やCSの知見を適切に抽出した開発支援AIが、プロダクトマネジメントの意思決定を支援する
- 優秀な個人の行動を AI が分析し、その人物と同じような振る舞いを他の従業員にも促す
- 全ての従業員の成果物を AI が解析・評価し、適材適所な人材配置を可能にする
- 任意の従業員の業務上の失敗を AI が蓄積し、同じような失敗をしようとした人を注意する
- AI導入のリスクを補って余りある魅力をプロダクトマネージャーは考える必要がある
AI による業務の自動化
最近、AI によるコーディングの自動化が一般的になってきました。 自分自身、コーディングの大部分を AI (より厳密には Cursorでgemini-2.5-proを用いた補完) にまかせており、 ここ1週間で書いたコードの 8 割くらいは AI によるものだと思います。 現時点において、そこまで AI が賢い訳ではないので、自身でUML などを設計し、最初のクラスの実装と空の method、method の説明を用意します。 そこまでやって、あとはAIに任せるとだいたいそれっぽいコードを生成してくれます(もちろん手直しは必須。そこまでAIは賢くない)。 ドメインロジックのコアの部分はさすがに任せませんが、usecase や view などはまぁ十分に機能するかなといった印象です。 その結果、以前は何も見ずにパッと書けたようなちょっと難しいコードが徐々に書けなくなってきたことを実感しています。
AI による自動化のリスク
AI によるコーディング自動化の弊害に関しては、Addy Osmani さんが Avoiding Skill Atrophy in the Age of AI という記事にて下記のように言及されていました。
Think of how GPS navigation eroded our knack for wayfinding: one engineer admits his road navigation skills “have atrophied” after years of blindly following Google Maps. Similarly, AI-powered autocomplete and code generators can tempt us to “turn off our brain” for routine coding tasks.
A 2025 study by Microsoft and Carnegie Mellon researchers found that the more people leaned on AI tools, the less critical thinking they engaged in, making it harder to summon those skills when needed.
Essentially, high confidence in an AI’s abilities led people to take a mental backseat - “letting their hands off the wheel” - especially on easy tasks It’s human nature to relax when a task feels simple, but over time this “long-term reliance” can lead to “diminished independent problem-solving”. The study even noted that workers with AI assistance produced a less diverse set of solutions for the same problem, since AI tends to deliver homogenized answers based on its training data. In the researchers’ words, this uniformity could be seen as a “deterioration of critical thinking” itself.
すっごいざっくり言うと、AI に依存することで人間の様々な能力が低下しているということです。
これは私も実感しています。ネット上で見る文書(プログラム・仕様書・ブログ)の質が低下しているように見受けられます(完全な主観です)。 ごく小さい単位で見ると丁寧で適切な言葉、読みやすい文章となっており、品質が高いように見えます。 しかし、文章から構成される仕様書、プログラムから構成されるアーキテクチャなど、少し抽象度を高くしたり、 考慮すべき範囲を広くして見てみると、チグハグで一貫性がないことが増えました。 また、試行錯誤をアウトソーシングしているためか、意思決定の根拠に経験知を伴わないケースも良く見ます。
その昔、コピペプログラムを戒めるような風潮が、ソフトウェア業界にはあったと思います。 理解せず利用したプログラムは、今回の仕様で適切に動くか保証ができず、問題が発生したときに対応できないからです。 しかし、AI によって生成されたプログラムに関しては、「やや」そのような自制の風潮が弱いように見えます。 SNSでは、「コードレビューを依頼され、設計・設定の意図を確認したところ、AI の出力を提示された。 AI の出力は誤っており、実装者はその妥当性の確認を怠っていた」といった話を見る機会も増えてきました。
将来的に AI がシステムの全てを統制し、従来の常識が通用しない時代が来るかも知れません。 その時代では、人間がシステムの細部まで把握する必要がないかも知れません。 プログラムにおける情報処理のあり方自体が変わり、機械学習のシステムのように確率的な挙動をするようになるかも知れません。 しかし、「今」はまだその時代ではありません。 我々エンジニアは今のプロダクト・コードに責任を持たねばなりません。 過度で、自制心を持たない AI への依存は、それとは真逆の振る舞いだと思います。
AI 自動化の流れは不可避だが反発も想定される
業務の自動化は AI システムとして最初に考えつくものです。 トレーニングデータが用意できて、AI が判断するのに十分な情報を入力として与えられたら、ある程度は実現できるでしょう。 専門性が高い職業であればトレーニングデータの準備自体にかなりのコストが想定されますが、それでも一度十分なデータを作って、自動化した上での運用も作れればリターンを得ることができるでしょう。 短期的に見たとき、トレーニングデータを作成し、AI を中心において業務を自動化できる企業は、労働コストや速度の面で競合優位性を作りやすいと思われます。 むしろ積極的に進めないと、競合に負けてしまい、長期的なことを考えられる立場でなくなる可能性が高いです。 私自身 AI を用いたシステム開発が業務の中心となっていますが、これにより過去の 1.2倍くらいの量の仕事をこなせるようになったと思います。 AI による補助なしで、他のソフトウェアエンジニアと比較されたとき、私の市場価値は目も当てられなくなるでしょう。
しかし、様々な業界で AI による自動化・効率化が進んでいったらどうなるでしょうか。 長い期間を経た後は、AI による自動化で人が減り、残った従業員の力も衰えます。 その状態では、新たなゲームチェンジが発生したとき、変化に対応する力を失っているでしょう。 現実、AI サービスを開発している知人が、とある会社の重役に上記のような理由で導入を見送られた話をしてくれました。 会社の中で立場が高い人だけでなく、これまでの仕事の仕方を変えたくない人・組織も、これらの理由を元に AI 導入に抵抗することも十分に考えられます。
2~3 年後の AI サービスと今のプロダクトマネージャーに求めたいもの
AI システムはその性質上、これまでのシステムと比較して導入費用が高くなるでしょう。 特に会社の業務に関わるものは中々リプレイスも難しく、相手も慎重になります。 導入費用が高くなったとき、決済者の立場も高くなるため、これまでと違う時間軸でシステムを評価します。
よってプロダクトマネージャーは、今のうちから「AI の自動化によるリスク」への答えを考えねばならないと思います。 私はそれが「AI にしかできないこと」で、「人・組織の、能力や成果を1段階引き上げること」だと良いなぁと思ってます。 「AIにしかできないこと」の具体的な例は、横断的なデータを大量に捌いて最適解を出すことです。 例えば従業員1人1人の仕事をAIが解釈・評価し、会社全体にとって最適な人事配置をしたり、 優秀な従業員の働き方を他の従業員が取り入れやすい仕組みを作ったり、似たような失敗が生まれにくい仕組みを作る。 などが考えられます。
統一した思想・見解を元に、大量のデータから最適な判断を、多くの事柄に対して行うことは1人の人間では出来ません。 しかし、AIはその補助ができます。会社で定めた最適解を、多くの部署・個人に反映させるために AI による支援を使うこともできるでしょう。
以上、AIの活用が自動化以外ではなくて「人・組織の能力、能力や成果を1段階引き上げる」ようなケースで増えたら良いなぁと思ったポエム記事でした。